2025.07.25
下肢静脈瘤手術のデメリットを徹底解説!後悔しないための全知識

下肢静脈瘤は、足の静脈の弁が壊れることで血液が逆流し、血管がコブのように膨らんでしまう病気です。
足のだるさ、むくみ、こむら返りなどの症状を引き起こし、進行すると皮膚炎や潰瘍を形成することもあります。
一度発症すると自然に治ることはなく、放置すれば悪化する可能性があります。
特に潰瘍ができてから受診される方もいらっしゃいますが、そのような場合は手術が有効な治療選択肢となります。
しかし、「手術」と聞くと、その効果だけでなく、デメリットやリスクについても気になるのではないでしょうか。
本記事では、下肢静脈瘤手術の種類から、それぞれの手術に潜むデメリット、そして手術後に後悔しないための注意点やクリニック選びのポイントまで、徹底的に解説します。
下肢静脈瘤の手術を検討している方、手術後の生活に不安を感じている方は、ぜひ最後までお読みください。
- リスク① 深部静脈血栓症
- リスク② 神経障害
- リスク③ 静脈炎
- リスク④ 術後疼痛、内出血
- リスク⑤ 色素沈着
- リスク⑥ 薬剤アレルギー
下肢静脈瘤手術のリスクとは?
手術にはメリットだけでなく、一定のリスクが伴います。
ここでは、下肢静脈瘤手術における代表的な6つのデメリットについて、原因・症状・対処法をわかりやすく解説します。
事前に正しい情報を知ることで、不安を軽減し納得のいく選択をしていただくための参考になれば幸いです。
リスク①深部静脈血栓症
エコノミークラス症候群とも言います。
下肢の奥にある静脈に血栓ができて足が腫れたり、血栓が肺の血管を閉塞し呼吸困難(肺梗塞)を生じることがあります。
大きな血栓が肺の血管を閉塞した場合には命に関わることがあり、入院治療が必要となります。
リスク②神経障害
血管と神経は部分的に横並びで走行する部分があります。
主に血管内焼灼術で血管に熱を加えたときに、隣にある神経に長時間熱が加わってしまったときに起こります。
慢性的なしびれや痛み、足をうごかせなくなるなどの症状が現れます。
ただし、局所麻酔で治療を受けている場合には神経に熱が伝わると強い痛みを感じますので、痛い時に我慢をせず、医師やスタッフに遠慮なく痛いことを伝えることが重要です。
短時間であれば、足をうごかせなくなるなどの生活に支障を来す、神経障害がの残る可能性はほとんどありません。
リスク③静脈炎
治療後に静脈に炎症が生じる場合があります。
多くは一過性であり、消炎鎮痛薬(痛み止め)の服用で改善します。
焼灼術、グルー塞栓術どちらの治療でもみられることがありますが、グルー治療の方が多いと言われています。
リスク④術後疼痛、内出血
焼灼部位のひきつれ感は高頻度に認められますが、2-3ヶ月でほとんど感じなくなります。
ひきつれ感は、元々弾力のある血管が、焼灼により硬くなることが原因です。
きちんと治療できている証拠でもありますので心配はいりません。
治療当日や翌朝にじんじんした痛みを感じる方がいらっしゃいますが、消炎鎮痛薬の服用で改善し、長期間持続することはありません。
内出血はしばしば認められますが、時間経過(3-4週間)で回復します。
リスク⑤色素沈着
焼灼部位に褐色の色素沈着が出現することがあります。徐々に薄くなってくることが多いですが、残存する場合もあります。
グルー治療ではほとんどみられない症状です。
リスク⑥薬剤アレルギー
手術時の薬剤によりアレルギーをおこすことがあります。
重度のアレルギーの場合は、血圧低下や心停止を生じることもあります。
また、グルー治療では、治療に使用する接着剤自体でアレルギーを起こすことがあります。
ほとんどは抗アレルギー薬の服用で改善しますが、接着剤は永続的に体内に残るため、希に治療に難渋する場合もあります。
安心して治療を受けるために
このように、下肢静脈瘤の手術にはいくつかのリスクがありますが、その多くは事前の準備や適切な術後管理によって十分に予防・軽減できます。
治療前には、過去のアレルギー歴や服用中の薬、持病などを医師にしっかり伝えておきましょう。
また、手術方法について不安や疑問がある場合は、遠慮せずに質問し、納得できる説明を受けることが大切です。
信頼できる医療機関では、こうしたリスクも含めて丁寧に説明を行い、最も適した治療法を提案してくれます。
正しい情報を知り、医師としっかりコミュニケーションを取ることで、不安を減らし、安心して下肢静脈瘤の治療に臨むようにしましょう。
手術を受ける前に知っておきたい治療法の選択肢
下肢静脈瘤の手術には複数の方法があり、それぞれに特性や適応、リスクの程度が異なります。
自分にとって最適な治療法を見極めるためにも、各手術法のメリット・デメリットを理解することが大切です。
ここでは、代表的な治療法の特徴について詳しくご紹介します。
下肢静脈瘤手術の主な種類とそれぞれの特徴
下肢静脈瘤の手術には、いくつかの種類があります。患者さんの症状や静脈瘤の状態によって最適な治療法が選択されます。
ストリッピング手術
逆流している静脈を物理的に引き抜く手術です。古くから行われている根治性の高い治療法ですが、切開を伴うため、傷跡が残る可能性や術後の痛みが比較的大きいという特徴があります。
全身麻酔や下半身麻酔で行われることが多く、数日間の入院が必要となる場合があります。
患者様への負担多いストリッピング手術を行うクリニックは現在減ってきています。
血管内焼灼術(レーザー治療・高周波治療)
細いカテーテルを血管内に挿入し、レーザーや高周波の熱で静脈を内側から焼いて閉塞させる治療法です。
切開が小さく、体への負担が少ないため、日帰り手術で行われることが多くなっています。
術後の痛みや内出血も比較的少なく、早期の日常生活への復帰が可能です。
グルー治療(血管内塞栓術)
医療用の接着剤を血管内に注入し、静脈を閉塞させる治療法です。
熱を使わないため、神経損傷のリスクが低いとされています。
こちらも日帰り手術が可能で、術後の圧迫が不要な場合もあります。
硬化療法
薬剤を静脈瘤に注入し、血管を固めて閉塞させる治療法です。
比較的軽度な静脈瘤や、他の手術後の残存静脈瘤に対して行われることが多いです。
注射のみで行えるため、体への負担は少ないですが、色素沈着や再発の可能性があります。
これらの手術法は、それぞれメリットとデメリットがあり、患者様の状態やライフスタイルに合わせて医師から提案があります。
手術後の生活と注意点:後悔しないためのポイント
下肢静脈瘤の手術は、治療自体が成功しても、術後の過ごし方によってその効果や満足度が大きく左右されます。
後悔しないためにも、術後の生活で注意すべき点を理解しておくことが重要です。
術後の痛みと対処法
手術後の痛みは、手術の種類や個人の痛みの感じ方によって異なります。
血管内焼灼術やグルー治療では比較的軽度ですが、ストリッピング手術では痛みが強く出ることがあります。
痛みに対しては、処方された鎮痛剤を適切に服用し、無理のない範囲で体を動かすことが推奨されます。
痛みが続く場合は、我慢せずに医師に相談しましょう。
日常生活での注意点(運動、入浴など)
術後の回復を早め、合併症を防ぐためには、日常生活での注意が必要です。
- 運動: 術後早期から軽いウォーキングなどの運動を行うことで、血行を促進し、深部静脈血栓症のリスクを軽減できます。ただし、激しい運動や長時間の立ち仕事は避け、医師の指示に従いましょう。
- 入浴: 手術部位が濡れないように注意し、シャワーは医師の許可が出てからにしましょう。湯船に浸かるのは、傷が完全に塞がってからになります。
- 圧迫療法: 弾性ストッキングの着用は、術後の腫れを抑え、血栓予防に効果的です。医師の指示に従い、適切な期間着用を続けましょう。(グルーのみでしたらストッキングの着用はなし)
- その他: 長時間同じ姿勢でいることを避け、適度な休憩を取り、足を高くして休むことを心がけましょう。
再発予防のためにできること
手術によって静脈瘤が改善しても、再発のリスクはゼロではありません。再発予防のためには、以下のような生活習慣の改善が有効です。
- 適度な運動: ウォーキングや水泳など、ふくらはぎの筋肉を使う運動は、血液の循環を助けます。
- 体重管理: 肥満は下肢静脈瘤のリスクを高めるため、適正体重を維持することが大切です。
- 長時間の立ち仕事や座り仕事の回避: 同じ姿勢を長時間続ける場合は、定期的に休憩を取り、足の運動を行いましょう。
- 弾性ストッキングの着用: 症状がある場合や、リスクが高い場合は、日常的に弾性ストッキングを着用することも有効です。しかし夜寝るときにストッキングを履くことはおすすめしていません。
後悔しないためのクリニック・医師選びのポイント
下肢静脈瘤の手術は、クリニックや医師によって治療方針や技術に差がある場合があります。
後悔しないためにも、慎重なクリニック・医師選びが重要です。
専門性
下肢静脈瘤の治療を専門としている、または血管外科を専門としている医師が在籍しているクリニックを選びましょう。
専門としている医師は、豊富な知識と経験に基づいて、最適な治療法を提案してくれます。
十分な説明
治療法ごとのメリット・デメリット、リスク、費用、術後の経過などについて、患者が納得できるまで丁寧に説明してくれる医師を選びましょう。
疑問点や不安な点があれば、遠慮なく質問できる雰囲気であることも大切です。
また話しやすい、ちゃんと話を聞いてくれることもとても重要です。
治療実績
多くの治療実績があるクリニックは、それだけ経験が豊富であると言えます。
可能であれば、治療実績や患者様の声などを確認してみましょう。
患者様の体験談は医療広告ガイドラインにより、医療機関のHPで掲載することはできませんので、Google口コミを見てみることも重要です。
アフターケア
手術後のフォローアップ体制が整っているかどうかも重要なポイントです。
術後の痛みや合併症、再発などについて、適切に対応してくれるクリニックを選びましょう。
複数の意見を聞く(セカンドオピニオン)
一つのクリニックの意見だけでなく、複数の医師の意見を聞くことで、より客観的な情報を得ることができます。
下肢静脈瘤の治療は保険診療となるので、誰が手術しても同じではなく、自費診療同様にこだわりを持つ医師選びが非常に重要です。
まとめ
下肢静脈瘤手術のデメリットを理解し、最適な選択を
下肢静脈瘤の手術は、足の不快な症状を改善し、生活の質を高める有効な手段です。
しかし、手術には種類があり、それぞれにメリットとデメリット、そしてリスクが存在します。
本記事では、下肢静脈瘤手術の主な種類とそれぞれの特徴、そして深部静脈血栓症、神経障害、静脈炎、術後疼痛・内出血、色素沈着、薬剤アレルギーの可能性といった具体的なデメリットやリスクについて解説しました。
また、手術後の生活で注意すべき点や、後悔しないためのクリニック・医師選びのポイントについても触れました。
これらの情報を参考に、ご自身の症状やライフスタイルに合った最適な治療法を選択し、安心して手術に臨んでいただければ幸いです。
下肢静脈瘤の治療は、医師との十分なコミュニケーションが不可欠です。疑問や不安な点は、納得がいくまで医師に相談し、ご自身にとって最善の選択をしてください。

この記事の監修者
院長 佟 暁寧